実は記憶にはたくさん種類がある!?心理学で重要なものは?

「記憶」には、分類分けがされていて複数の種類があるのをご存知ですか?例えば、「心理学は人の心を扱う」というような知識も記憶、「心理学のセミナーに参加した」という過去の思い出も記憶、車の運転方法だって記憶の一つです。また、認知症の方の症状を心理学的に理解する上でも、記憶の種類について把握しておくことは重要です。

実は奥が深いかも!?という記憶の種類、早速見てみましょう。

記憶の種類

記憶の持続時間によって3種類

「記憶」には、その記憶できる時間別に分けると、3種類あります。

  • 感覚記憶
  • 短期記憶
  • 長期記憶

の3つです。

まず、感覚記憶とは、

  • 目や耳といった「感覚器官」から入ってきた情報を、数秒程度保持する記憶
  • 聴覚情報の記憶は5秒程度だが、視覚情報の記憶は1秒程度

というものです。どうやら、私たちは目で見たものや耳で聞いたものをほんの一瞬だけ記憶しているようなのです!しかも、耳から入ってきた情報のほうが長持ちのようですね。しかし、一度記憶してもすぐに忘れています。

続いて、短期記憶とは、

  • 注意を向けた情報を一時的に蓄える記憶
  • 15~30秒程度で消える

というものです。

たとえば、どこかに電話をかけようとして電話番号を覚えておくときに短期記憶が発揮されます。はじめて電話をかけるようなところだと、「ゼロ・キュウ・ゼロの…イチ・ニー…」と何回もつぶやきながら忘れないようにしたりすることはありませんか?このように、記憶内容を何度も機械的に繰り返すことをリハーサルと呼びます。そうすることで、30秒くらいは覚えていられるわけです。

最後に、長期記憶とは

  • 持続時間は半永久的、容量の限界もないと考えられている記憶
  • 短期記憶に置かれていた情報の一部が移行

というものです。容量の限界がないって、すごいですよね!しかも、一度長期記憶に移行してしまえば、半永久的にもつようなのです。

しかし、「なんだっけ、あれ、あのー、ほら、あれだよ!」と、なかなか思い出せず悔しい思いをすることが誰しもあると思います…。それは、長期記憶の情報は消えてしまってはいないのですが、検索(記憶を引き出すこと)に失敗している状態です。頭の中の引き出しには確かに記憶した内容の情報が残っているけれども、その引き出しをうまく見つけられない、というイメージですね。

ちなみに、短期記憶を長期記憶に移行させるには、記憶する内容を、すでにもっている知識や体験を関連付けて覚えることが有効です。例えば、歴史の年号の語呂合わせはその良い例ですね。「1192年」はただ数字で覚えようとすると、すぐに忘れてしまいますが、「いい国作ろう」という意味のある言葉にして覚えると、長期記憶に移行しやすくなります。

長期記憶の中にもたくさん種類があります!

長期記憶にも複数の種類があります。わかりやすいものだけピックアップすると、意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶、の3つが代表的です。まず、

  • 意味記憶とは、一般的な知識の体系。辞書的な知識のことです。

例えば、「りんご」に関する知識であったり、「りんごは青森県の名産」という知識です。続いて、

  • エピソード記憶とは、個人的な経験の記憶のことです。

例えば、「昨日スーパーでりんごを買った」「去年の夏は旅行にでかけた」といった記憶です。そして

  • 手続き記憶とは、言語やイメージによって記述することができない記憶のことです。

その代表例は、自転車の乗り方、です。自転車に乗るとき、「まずサドルに座って、次にペダルに足を乗せて、上手くバランスを取りながら右足で漕ぎ出し、左足で…」というふうに、言葉でその方法を記憶していませんよね。”体で覚えている”という記憶です。ほかにも、車の運転や、料理の手順などもそうです。

手続き記憶はほとんど忘れる事がありませんが、意味記憶やエピソード記憶の内容は、なかなか思い出せないことがあります…(;^ω^)

心理学的に重要な記憶

心理学を使ううえで”記憶”が重要な理由

心理的に問題、課題、何か助けを必要とする人、の中には記憶に問題を抱える人が多くいます。

例えば、解離性同一性障害。この疾患は、いわゆる”多重人格”として知られています。一人の中に別の人格が複数存在し、それぞれの人格は交流することがありません。すなわち、記憶が共有されていません。

また、次にお話する認知症は身近な例の一つです。物忘れから始まり、最終的には家族のこともわからなくなる…ということは、テレビドラマや映画でもよく取り上げられていますね。

つまりは、疾患を抱えている人のことを支援するためには、その方の症状をよく理解していなければ支援方法もわかりません。ということは、記憶に問題があれば、どのような記憶に障害があるのか、ということも把握しなければならないのです。

認知症の方にとっての記憶

認知症を患っている方の記憶は、これまで見てきたような分類分けをして心理学的に理解することができます。

認知症の中でも、アルツハイマー型認知症を例に考えてみましょう。アルツハイマー型認知症は、最近のできごと、つまり新しい情報を覚えることが難しくなる病気です。一方で、昔のできごとの記憶、つまり長期記憶の情報は比較的保持されています。つまり、アルツハイマー型認知症は、短期記憶から衰え始めるのですね。

例えば、アルツハイマー型認知症を患っている方は、ついさっき話していた情報は覚えておくことが難しいので、何度も同じ話を繰り返すことがあります。しかし、戦争のころの話を尋ねてみると、「あの時分は大変な時代でね。ちょうど私は疎開先で…」と、たくさんのお話をしてくださる方も多いです。

アルツハイマー型の患者さんには、昔話をしていただき、記憶を刺激して認知症の進行を遅らせる、という心理学的なアプローチもあるくらいなのです。したがって、認知症の方の症状や進行状況を捉える上では、短期記憶、長期記憶の知識が非常に重要です。

まとめ

記憶には大きく分けて3種類ありました。

  • 目や耳から入ってきて数秒程度保持する「感覚記憶」
  • 注意を向けた情報を一時的に蓄える「短期記憶」
  • 短期記憶の情報が一部移行し、ほぼ半永久的に持続される「長期記憶」

また、

  • 長期記憶の中には、意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶、という分類分けがなされていました。

さらに、心理学的に認知症の方の記憶を理解すると、

  • 認知症(とりわけアルツハイマー型認知症)の方は、短期記憶から失われ、長期記憶は比較的保持できる

という内容した。できるだけ多く記憶したい、と学生時代のころはよく思いましたが、そのためには、できるだけ長期記憶に情報を移行させる、ということが必要なようです…!(´∀`)

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