人はなぜ差別をするのか?内集団、外集団から心理学的に考える

内集団、外集団という言葉を聞いたことはありますか。実はこの考え方が、差別を生む一つの要因となっている可能性があるのです。人間の心理として何が起こっているのか、考えてみましょう。

内集団、外集団の働き

まずは内集団、外集団とは何か、そしてその働きから理解していきましょう。考えてみれば納得のできることばかりです。

内集団、外集団とは

コトバンクの説明によると、

内集団は、個人が自らをそれと同一視し、所属感を抱いている集団で、それに対して外集団は、「他者」と感じられる集団で、競争心、対立感、敵意などの差し向けられる対象である。

どちらの言葉もアメリカの社会学者W.G.サムナーが唱えた概念です。簡単にまとめると

  • 内集団は自分が所属していると感じる集団
  • 外集団は自分が所属していない集団

といえます。例えば、内集団としては自分が住んでいる地域で、外集団はその他の地域、あるいはその他の地域から引っ越してきた人も「よそ者」として外集団になるかもしれません。私は関西地方に住んでいるものですから、この内集団の感覚はかなり強く感じています。関西人であることに愛着があり、誇りを持っているのです。

一方で、外集団にあたる関東の人たちに対しては、なんとなく対立心やライバルの感覚があり、どうしても自分たち(関西人)のほうが優れている!というふうに考えがちです。関西はその風潮が大いにあるように感じます(^-^)笑

内集団びいき

人間の心理として、自分が所属するグループである内集団には愛着があるので優れていると感じ、その他のグループである外集団には競争心や対立心を抱きがちなのです。結果的に、自分が所属するグループを有利に扱ってしまうことを「内集団びいき」と言います。

例えば、職場で同じ大学出身の部下や同僚がいると、良い人だという印象をはじめから抱いたり、親近感を持ったりすることがあります。逆に、別の大学出身者の部下や同僚だったら、少し「よそ者」感を感じるかもしれません。

また、内集団びいきはスポーツではっきりと表れます。例えば野球を考えてみましょう。地元のチームを応援したくなりませんか?普段はそれほど意識しなくても、試合になると地元に対する愛着心が高められることも多いです。逆に、他の地域のチームに対しては、やはり対立心や競争心を感じますよね。

出身校や出身地だけではありません。そのほか、性別も内集団になり得ます。私は女性なので、選挙で女性の候補者がいるとやはり応援したくなりがちです。男性よりも女性のほうが良いと感じて、ひいきしているのですね。

また、年齢も内集団になることがあります。自分と同年代の人たちのほうが、他の年齢層の人たちよりも身近に感じますし、同年代の人たちの成功を強く信じており、世の中で活躍している同年代を見ると嬉しくなるものです。

内集団びいきが差別を生む心理

内集団びいきはつまり、身内びいきを意味します。その反面、内集団ではない外集団の人たちには対立心や競争心が芽生え、排他的になることから、結果的に差別が生まれることもあるのです。よく例として挙げられるのは、ユダヤ人の迫害です。民族間の差別ですね。自分たちの民族のほうが優れていて、他は劣っている、という考え方です。

自分たちのほうが優れている、と感じると、その集団の凝集性は高まります。集団としてよりまとまりが良くなるのです。オリンピックのような国際的なスポーツ大会では、自分たちの国を応援しますね。普段、どれだけのいざこざを抱えていても、そのときだけは仲間意識が芽生えるものです。そのように外に敵を作ると、内に対する帰属意識が高まるという心理も働きます。

近年は世界的に、内集団びいき的な動きが目立っているように思われます。アメリカのトランプ大統領なんかは、典型的ですね。わかりやすい白人至上主義、つまり自分の内集団である白人のひいきです。また、トランプ大統領は女性蔑視の発言もしているので、男性という内集団のひいきもしています。ほかにもたくさんありますよね。

その風潮は、一般庶民にも広がっているような気がします。近年、日本にも外国人観光客が増え、日本で働く外国人も増えてきました。彼らに対して、どこか「よそ者」な目で見てしまっていませんか。

以前、よく行く飲食店で、普段なら日本人のアルバイトが対応するのに、その日は外国人のアルバイトしかいなかったことがありました。彼らの日本語にはほとんど問題がないのに、「大丈夫かな」と心配になってしまいました。私は心のどこかで、「彼らはちゃんと仕事ができないのでは」と思っていたのかもしれません。

内集団びいきに気づくには

内集団びいきは、認知バイアス、という心理の現象が起きているので、無意識にしてしまうものです。しかし、無意識で誰かを差別してしまうのは避けたいものですよね。自分が内集団びいきしているかもしれないと気づくためには、

  • 自分とは違う考え方を持っている人と話す(年齢、性別、仕事、国籍が違う人など)
  • 自分がよく思わない人たちのことを調べてよく知る
  • 自分の考えは集団の考えにまきこまれているのではないか、と振り返る

といったことをして、常に自分の気持ちや考えを見つめることで、自分の心の中で起こっていることに気付けると思います。

まとめ

人が差別する心理について、内集団と外集団という視点から見てきました。

  • 内集団とは自分が所属していると感じる集団、外集団とは自分が所属していない集団

でしたね。そして、

  • 内集団には愛着を感じ、外集団には対立心を感じるため
    内集団を有利に扱う内集団びいきが起こる
  • 内集団びいきは日常的に起こっている
  • 内集団びいきが差別を生むこともある
  • 自分がしてしまっている内集団びいきに気づくには、自分の気持ちや考えを見つめる

といったことを見てきました。内集団びいきといった認知バイアスは、無意識のうちにしてしまっているものですから、それに気づき、できるだけものごとを公平に見られるように鍛える必要がありそうですね。

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