心理学を学んでみたいけど、どんなメリットがあるのだろう?と疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。
実際に大学院で心理学を学んでみて、日頃から「これは心理学ならではのメリットだよね!」と思っているメリット3つをご紹介します。心理学を学ぶと人生が豊かになること間違い無し!
それでは早速見ていきましょう。
ストレスに対処しやすくなる
ストレスは捉え方次第、と気づく
私たちが普段使っている「仕事が多くてストレスが溜まりいらいらする」といった表現。心理学の世界ではこの場合、
- 仕事が多いという状態を「ストレッサー」(ストレス要因)
- ストレッサーが引き起こすいらいらなどの反応を「ストレス反応」
と分けて呼びます。
※ストレスについて詳しく知りたい方は、こちらのページが詳しく説明されています。
心理学を考える上で、有名なのはLazarusという学者のストレスモデルです。
このストレスモデルをざっくりとご説明すると、ストレス反応が起こるメカニズムは、
ストレッサー⇨認知的評価⇨対処⇨ストレス反応(⇨疾患)
という流れなのですね。
つまり、ストレッサー(ストレス反応を引き起こす要因)があればすぐにストレス反応に結びつくのではなく、間に「認知」、つまりものごとをどのように捉えるか、という判断が挟まります。
例を挙げてみましょう。
朝出勤して、上司に挨拶したら、完全に無視されたとします。(=ストレッサー)
- 「なんで無視するの?朝から気分悪い」
- 「あいつー!むかつく!キィー!!」(=ストレス反応)
しかし実は、そのストレッサー(ストレス要因)とストレス反応の間に
「挨拶を無視するのは悪いことだ、だめなやつだ」(=認知的評価)
というその人の認知的評価が挟まるため、気分が悪くなるのです。
ここで、立ち止まって、
- 「今朝出勤するまでに嫌なことがあったのかな」
- 「たまたま、虫の居所が悪かっただけかも」
- 「声が小さくて聞こえなかったのかもしれないな」
などという認知的評価をすれば、キィー!とならずに済むと思いませんか?ストレスになる出来事って世の中にありふれていますが、実はストレスを感じる(ストレス反応になる)かどうかは、個人のものごとの捉え方次第なんです。
心理学を学ぶと、多様なストレスモデルを理解でき、捉え方次第でストレスになるかどうか決まるんだな、ということがわかります。
自分のストレス対処方法に気づく
ストレスのメカニズムを知ると、自分自身はどのようにストレスに対応しているだろうかと振り返ることができます。先程挙げたLazarusのモデルの「対処」の部分のお話です。私たちは意識せず、ストレッサーを体験、評価したあとに、「対処行動」を取っています。
例えば、先程の挨拶の例で言うと、「挨拶しないなんてだめなやつだ」と評価したとすると、
- 仕返しとして冷たく接する(=対処行動)
あるいは、「声が小さかったかな」という評価をしたのであれば
- 上司に駆け寄って近くでもう一度大きな声で挨拶してみる(=対処行動)
というふうに、なにかしらの対処をしていると思います。後者のほうが、その後の人間関係はうまくいきそうですね。笑
ここまで理解していれば、自分が「ストレスを感じたとき、どのように対処してるかな」と振り返ってみることもできます。すると、対処行動はワンパターンだと気づきます。
ある程度、自分の得意な対処は決まっています。私の場合、「なかったことにしよう」と、否認してしまいがちです。しかしここで大事なのは、対処のパターンを増やすこと。激しく変化している世の中ですから、ストレスのパターンも様々。対処のパターンをたくさんそろえておくとよいですね。
どんな対処方法のパターンがあるか、というのは心理学を学ぶとある程度、分類分けできます。自分の対処の傾向を知ってから、普段使わない対処も揃えておくと、うまくストレスに対処しやすくなるのです。
他者に寛容になれる
相手のいやなところはその人の「特性」だという見方ができる
心理学を学び始めると、パーソナリティ(個性、特性)について考え学ぶことが多くあります。とりわけ、心理学の中でも臨床心理学において必ず学ぶカウンセラーの基本的な態度には、「無条件の肯定的関心」と「共感的理解」があります。
その基本的態度のうち
- 「無条件の肯定的関心」とは、相手の言動や感情を無条件に、価値判断することなく受け入れること
- 「共感的理解」とは、相手の言いたいことをそのまま受け取り、相手とその世界を理解すること
というような意味です。
つまり、クライエントの言動に対して良し悪しの判断をせず無条件に受け入れ、まるでクライエントの中に入り込んでいるかのようにその人の思いや考えを感じ、理解するのです。そういう意味で、心理学はその人らしさをそのまま受け入れる、素晴らしい学問だと思います。これら基本的態度は、相手のいやなところの見方を変えるうえで有用なんです。
例えば、よく遅刻をする人。普通に考えると、周囲の人には迷惑な話です。しかし一方で、その人の遅刻を価値判断せず無条件に受け入れ、よく理解しようとすると、「もしかしたら、遅刻をするということは、見通しをもって行動することが苦手なのかもしれない」と考えられます。それがその人の特性なのだろうと理解できます。
普段、自分の性格に合わない嫌な人だと思っている相手のいやなところは、心理学的に考えて「これがこの人の特性なんだろうな」という見方ができるのが、心理学を学ぶメリットの一つだと思います。
スペクトラムで理解
DSMという、米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルでは、これまでいわゆる「自閉症」や「アスペルガー障害」と呼ばれていた精神障害が、最近「自閉スペクトラム症」という名称に統一されました。
※自閉スペクトラム症を詳しく知りたい方は、このページで説明されています。
ここで注目したいのが「スペクトラム」(つまり「連続体」)とい概念です。これまで発達障害のと捉え方は、「自閉症」や「アスペルガー障害」と白黒はっきりつけて分類されてきました。しかし近年はスペクトラム(連続体)として、障害の特性を、強いものから弱いものまで幅をもって捉えよう、という考え方をします。色の濃淡のイメージがわかりやすいと思います。
発達障害に限らず、他者の特性を理解するときも(自分自身を理解するときも)、白黒はっきりさせるのではなく、特性の強さ、弱さを、幅を持って連続的に見るのです。難しい言い方をしましたが、先程、例に挙げた遅刻をする人を再び例に挙げて説明してみます。
その人は毎回のように遅刻するのかもしれませんが、月に1回や、年に3回…など、誰しも遅刻の経験は少なからずありますよね。
どの人も特性は持っていますが、その強さ弱さで日常生活に支障が出るレベルかどうか、相手に迷惑をかけるレベルかどうか、が変わってくるのです。みんな同じ連続体上にいる、ということです。
そう考えると、この人はよく遅刻する人だけど、自分も少なからず遅刻することもあるしな、まいっか。と、相手の気持ちがわかるような気がしませんか?(#^^#)
自分の内面を見つめられる
自分の得意不得意がわかる
心理学を学ぶと、自分の内面を見つめる機会が多くなります。心理学のさまざまな理論を、自分に結び付けて考えるからですね。私自身が心理学を学び、内面を見つめた結果、気づいた自分の得意と不得意の例を少し挙げてみます。
得意なことは、私はものごとを言語で整理することです。
例えば、視覚的に図だけで説明されている説明書がありますが、それよりも、言葉でつらつらと書かれている説明書の方がわかりやすいと感じます。視覚情報より言語情報の方が得意のようですが、視覚情報が得意かあるいは言語情報が得意か、といった視点は心理学を学ぶまでは持ったことはありませんでした。
一方で、ものごとの処理スピードは遅い方で苦手です。
言葉で整理するのは得意なのですが、本を読むスピードは遅く、会話するときには、考えながら話すと頭でぐちゃぐちゃになり、話すスピードは必然的にゆっくりになって、そのうち自分で何を言っているのかわからなくなることがよくあります。これは「なぜできないんだろう」と悩んでいましたが、心理学を学び、ものごとの処理スピードが遅いせいなのだ、とはっきりと理解できました。
心理学の視点をもって自分の内面を見つめると、自分の得意不得意がはっきりとしてきます。
自分を好きになれる…?
「?」がついているのは、私自身まだ継続して努力している最中だからなのですが(^^ゞ
自分の得意不得意など特性がわかってくると、これまで「どうしてできないんだろう…」と悩んでいたことが「これは私の苦手分野なんだ」と割り切れます。さらに「私には他に得意なことがあるからいいじゃん」とも思えます。
とても単純な話ですが、私なら「本を読むのが遅くたっていいじゃん!書くほうが得意だもん!」みたいなことです(∩´∀`)∩
苦手なこともある自分をありのままの自分を受け入れて好きになれる、という気がしています。これ、かなり大きなメリットですよ!
まとめ
心理学を学ぶメリットには、
- ストレスのメカニズムを知り、ストレスに対処しやすくなる
- 自分も他者も同じ連続体上にあると知り、相手のいやなところも特性だという見方ができる
- 自分の内面を見つめることで、自分の特性がわかり、さらに自分を好きになれるかも?
といったものがありましたね。
こうやってみると、心理学を学ぶと、身の回りの世界の捉え方が変わり、より豊かに生きていけるような気がしませんか?
心理学を学び、自分を好きになれたら最高ですね!