ゲシュタルト療法という名前をお聞きになったことがある方は多いかもしれません。でも実際にはどういうものかご存知ですか?ゲシュタルト療法は、どうやら「今、ここ」を大事にする心理療法のようです!そして、そのやり方もご紹介します。
さらに、ゲシュタルト療法は危険ではないかと思われているようですが、本当のところはどうなのでしょうか?では、順に確認していきましょう!
ゲシュタルト療法とは
今、ここが大事
ゲシュタルト療法は「今、ここ」を大切に扱います。過去のことに着目するのではなく、ゲシュタルト療法を受けようとしている今、ここでの気持ちや感覚を捉えるのです。それらを言語的に、そして身体的に表出して、最終的には気づきを得られるように促していきます。
昔ながらの心理療法では、過去を振り返って話をするスタイルが定番でした。例えば、人と話すことが苦手な人を取り上げてみると、
- 幼い頃から学校の友だちとは会話をするのがしんどくて、休み時間はたいてい1人で過ごした
- でも家族とはあまり問題なく話せた
- 人と話すと、自分が変な人だと思われたり嫌われるのではないかと思って怖かった
みたいなことを思い出しながら語るわけです。
しかし、ゲシュタルト療法では、
- 今、私は椅子に座って1人の人と向かい合って話をしている
- とてもドキドキして、何を話そうか迷っている
- 少しこの場から逃げたいとも思う
ということを話すイメージでしょうか。「今、ここ」を here and now とも言いますが、今(now)ここで(here)感じていることを言葉にするのです。
ゲシュタルト療法のメカニズム
上の絵は「ルビンの壺」という、いわゆるだまし絵として有名ですね。はじめ、真ん中に一つの壺があるように見えるんですが、見方を変えると二人の人の顔が向かい合っているようにも見えます。しかし、この2つを同時に見ることはできません。どちらか一つずつです。
このように、人間は2つを同時に知覚することは不可能なのです。ゲシュタルト療法を提唱したパールズは、人間の欲求にも同じことが言えると考えました。つまり、人は、2つの欲求が同時に出てきたとしても、まずそのうちの一つを選でます。そして、その欲求が解消されると、もう一つの欲求を選ぶということをします。
この現象を、ゲシュタルト心理学では、「図地反転」と呼びます。
- 図とは、意識の前面にあるもの・関心事
- 地とは、背景にあるもの
ここでもう一度、「図」と「地」を使って、人間が欲求を解消する道筋を考えてみましょう。まず、2つの欲求が同時に出てきたときに、そのうちの一つを選んで(一つを図だと認識し、もう一つを地だと認識)解消します。その次に、地に追いやっていた残りのもう一つの欲求を選び(地から図に出てくる!)、解消します。最後の過程が「図地反転」です。
健康な人は、この図地反転がスムーズに行くのに対し、健康でない人は、2つの欲求が競合してしまい、自分の欲求がわからなくなっている状態、と捉えます。そのような方に、ゲシュタルト療法を使って、欲求を順に図として意識に上ってくるようにするのです。
やり方
ゲシュタルト療法のやり方にはどのようなものがあるのでしょうか。有名なものは「エンプティ・チェア」です。その名の通り、エンプティ(空)のチェア(椅子)を使います。
- 空の椅子に、「もうひとりの自分」や、今抱えている「問題そのもの」を座らせることをイメージする
- 座っているものに語りかける
ということをします。一度、想像してみてください。何か思い悩んでいることがあったとして、もうひとりの自分を目の前の空の椅子に座らせたとしたら、何と語りかけますか。「大丈夫だよ、気にしないで。」なのか、「しっかりやってるじゃん!やれるだけのことややってるよね、だから落ち込まないで」なのか…。自分から自分に語りかけるだけで、少し気持ちが落ち着きそうな気がします。これも「今、ここ」での気持ちを言うのです。
ゲシュタルト療法は危険なのか!?
危険かどうかはゲシュタルト療法に限られない
「ゲシュタルト療法 危険」というキーワードで検索されている方が多いようです。ゲシュタルト療法を知識としての理解のみで、実際に体験をしたことがないので、はっきりと申し上げることはできませんが、必ずしも「危険」とは言い切れないと思います。むしろ、危険かどうかは、ゲシュタルト療法に限らず、どの心理療法にも当てはまるのではないでしょうか。
心理療法がもたらすものが危険かどうかは、その心理療法を受ける方の病態水準や、心理療法との相性や、もちろんセラピストの技量など、多くの要因があるはずです。当然、それらを考慮して、心理療法を実施するかどうかは決定されます。
イメージとして持っていただけるとしたら、「グロリアと3人のセラピスト」という動画があります。
この3人のセラピストは、皆さんの依って立つ理論や技法が異なる超有名なセラピストですが、そのうちの1人が今回ご紹介しているゲシュタルト療法の提唱者、パールズです。
30代の女性に対して個人カウンセリングを行っているのですが、その手法は初めて見たとき、少し驚きました(;・∀・)ゲシュタルト療法って、こういうことなのだろうという漠然としたイメージが掴めるかもしれません。you tubeのページを載せましたので、よろしければご覧ください。ただし、日本語吹き替え版は、you tubeには残念ながら見つかりませんでした。
また、専門家のみならず一般の方向けに、ゲシュタルト療法のワークショップや体験セミナーが全国で開催されていたりしますから、興味のある方は足を運ばれて、一度体験してみるのがいいかもしれません。もしも危険だと感じたら、すぐにやめれば良いと思います。
まとめ
ゲシュタルト療法は、
- 過去ではなく「今ここ」での気持ちや感覚を言葉にすることを大切にする
- 「今ここ」を言葉にすることで、理論上の「図地反転」を目指す
- エンプティ・チェアという、空の椅子を使うやり方が有名
- 必ずしも危険とは言えず、どの心理療法にも危険性は少なからず存在する
という点がポイントの心理療法でした。
ゲシュタルト療法を受けると、これまで自分では気づかなかった気持ちに気づくことになって、気分がすっきりするようです。ものは試しで、挑戦してみたいですね(´∀`)