認知行動療法は、うつや不安に効果的とされています。でも、カウンセリングでしか体験できないわけではなく、実は自分でも試してみることができるのです!普段からクヨクヨしてしまうクセのある人は、自分でやってみると、自分の考え方のくせに気づくかもしれません。
やり方はそれほど難しいものではありませんよ!少しやり方を身につけて練習をしてみましょう!気軽にやってみてくださいね(´∀`)
認知行動療法とは?
認知行動療法というのは、その名の通り、認知療法の技法と行動療法の技法を組み合わせているような心理療法のことを指します。その意味で、とても幅広い概念ですが、その分、さまざまな技法が開発され、それらをクライエント(相談者)に合わせて使う、という方法を取ります。
認知の仕組み
認知とは、ものごとの考え方や捉え方、のことを言います。認知行動療法、はこの認知に注目したり、そのほか感情、行動、身体感覚に着目します。これらは、外界からの刺激によって、循環して反応していると捉えます。ここで重要なことは、私たちが感情を感じるときは、
状況(外界の刺激)→認知(=思考)→感情
という流れで感情が起こっているということです。なにかの状況に直面して、いきなり感情が沸き起こっているわけではないのですね。例えば、例を出すと、
- <状況>友だちに挨拶をしたが、素通りされた
↓ - <認知>「もしかして私のこと嫌い…?」「なにか悪いことしたかな」
↓ - <感情>悲しい・不安
こういった流れです。いきなり悲しくなるのではなく、その間に実は認知が入っています。この、その場で頭の中にぱっと思い浮かぶ考えを、認知の中でも「自動思考」と呼びます。認知療法を自分でやってみる上で、この認知の仕組みと自動思考を理解しておくことは重要です。
認知行動療法は取りかかりやすい
心理療法を一人で実施するというのは、なかなか難しいものが多いです。一人でできないからこそ、カウンセリングという場面で専門家のカウンセラーと一緒に行っていくのですね。しかし、認知行動療法は、なんと一人でもできることが多いのです。
これは、セルフヘルプといいます。自分で自分(セルフ)を助ける(ヘルプする)のですね。カウンセリングに通う前に、自分自身で自分を助ける練習をしてみることができます。そう思うとなんだか身近に感じませんか?認知行動療法はそういった意味で、取りかかりやすい、ハードルが低い心理療法だと思います。
どんな時に使う?
認知行動療法は、実はエビデンス(根拠)がはっきりと立証されている心理療法なのです。基本的には、うつ病と不安によく効くとされています。もちろん、薬物療法といって、抗うつ薬や抗不安薬など処方してもらうことでも、症状は落ち着くのですが、それに加えて認知行動療法をすると、さらに良いとされているのですね。
認知行動療法を自分でやるときの注意点
わりとお手軽に取り組める認知行動療法ですが、自分でやってみるときの注意点があります。それは、
- ある程度回復してから取り組む
- 主治医がいる場合は主治医の判断に従う
という2点です。今現在治療のために通院していたり、服薬しているのであれば、主治医の判断に従うべきです。主治医が一番あなたの状態を専門的に把握しています。そして、通院や服薬をしていないとしても、回復できていない状態でやっても逆効果です。むしろしんどくなる場合があります。ある程度、元気が出てきてから取り組んでください。
認知行動療法を自分でやってみる!
何はともあれ、認知療法を自分でやってみるやり方をご紹介します。認知行動療法の技法はたくさんあるので、全部はとてもできません。今回は、認知行動療法の中でも良く使われる、「認知再構成法」の概要をお伝えしますよ!紙とペンを用意しましょう。
ストレスに感じた状況を書いてみる
日々の中で起きた、ちょっとしたストレスになった状況を挙げてみましょう。人それぞれストレスだな、と感じることにはパターンがあると思いますが、ひとまず思いついたことを書いてみます。「ちょっとした」というところがポイントです!あまりに大きな問題にしてしまうと、行き詰まる可能性があります…。さて、ここではAさんを例に挙げてみます。Aさんは、
- 職場の先輩に仕事のミスをまた指摘された
という状況を挙げました。この例を使って、このあとを進めてみます。
感情を書き出す
続いて、この状況において、どんな気持ちになったか、その感情を書き表してみます。感情とは、2文字や4文字くらいで一言で言い表せるものです。例えば、先程の例だと、Aさんにはこのとき、
- 落ち込み
- 自責
- 不安
という感情がありました。どれもネガティブなものばかりですね。この状況のことを思い出して、どんな気持ちだったか書いてみましょう。
自動思考(考え方のクセ)を書き出す
次に、それらの感情を感じているときに、どんなことを頭で考えていたかを書き出します。先程ご説明した「自動思考」、つまり「認知」の部分ですね。ここが難しいですがポイントです。自動思考は、人によってある程度パターンが決まっているので、「考え方のクセ」とも呼ばれます。この考え方のクセに気づく練習がこのステップです。
さて、Aさんがそれぞれの感情を感じていたときに、頭に浮かんでいた考えは、
- (落ち込み)→僕は先輩にミスを指摘されてばかりだ
- (自責)→自分のせいで先輩に大きな迷惑をかけている
- (不安)→もう先輩には嫌われたんじゃないか
といったものでした。これらが、Aさんの自動思考ということになります。「自動思考」と呼ばれるだけあって、この考えは自動的に頭の中で起こっています。なにか出来事があると、自動でぱっと思い浮かぶので、普段私たちは気にも留めません。だからこそ、ここでの自動思考を書き出す作業は難しいのです…。
思考に対して反証できるか?
この段階では、それらの自動思考に反証を挙げていきます。つまり、「果たしてその考え方は正しいのか?根拠はあるのか?」といったことを検討していくのです。Aさんは、じっくり時間をとって、先程挙げた3つの自分の自動思考について、改めて考えてみました。
すると、意外にも、自分が考えていたこと(自動思考)には根拠があまりないことに気づきました。むしろ、例外があります。例えば、
- 僕は先輩にミスを指摘されたばかりだ
→僕は先輩に褒められることも少しずつ増えているのも事実 - 自分のせいで先輩に大きな迷惑をかけている
→実際にミスをしても、それほど大事には至っていない - もう先輩には嫌われたんじゃないか
→そういえば、ミスを指摘されたあとも飲み会に誘ってくれた(だから、嫌われたとは断定できない)
このように、Aさんは、自分の考え方(自動思考)は、思い込みなのでは?と思うことが多いことに気づき始めます。そして、これら反証を挙げたあとで、極端なクセのない、バランスの取れた思考としては、どういったものになるか、改めて検証してみるのです。
バランス思考で感情はどう変化するか
反証も踏まえて、先程の状況では、Aさんはバランスの取れた思考としてどのような思考をすればよいのでしょうか。例えば、こんなふうに考えられます。
- 先輩は僕を教育するために僕のミスを指摘もするし、褒めることもしている
- 新人のミスなので、先輩は周囲の人がカバーしてくれて大事には至っていない
- 先輩はあくまで仕事上で叱ってくれているだけで、それだけで僕のことは嫌いにはなっていない
このように考えると、Aさんの感情(落ち込み、自責、不安)は少し楽に感じられるでしょう。このように、ぱっと思い浮かんだ自動思考を修正していく、という作業をしていくと、気分が落ち着く場合があります。
ポイントは書き出すこと
これらの過程をもちろん頭の中で行うのもいいのですが、慣れるまでは書き出すといいと思います。というのも、この作業は慣れない作業だからです。ごく自然に、私たちはぱっと浮かんだ考えに従って生きています。常に自動的に行っている作業に対して、「ちょっと待った!」と物言いをつけるのですから、なかなか難しい作業なのです^^;
また、書き出すことによって客観的な視点を得ることができるという利点もあります。ネガティブな思考はぐるぐると頭の中を回りがちです。そのぐるぐる、もやもやした気持ちを一旦紙に吐き出してみましょう。少し整理されて、「おや?これは違うのでは?」という客観的な見方ができるのです。
まとめ
認知行動療法とは、
- 認知の仕組みを理解して行う
- 一人でもできる心理療法
- うつと不安によく効くとされている
- 症状がある程度回復してから行い、
主治医がいれば主治医の指示に従うということに注意する
というものでした。そして、その一つの方法として、自分でやるときのやり方は、
- ストレス状況を書く
- 感情を書く
- 自動思考を書く
- 自動思考に対して反証を挙げる
- バランス思考を考え、感情の変化に気づく
という流れで行い、とにかく書き出すということがポイントでした。慣れない作業ですが、繰り返し行っているうちに、自分の考え方のクセが見えてきます。そこに気づけたということは、自分自身を客観的に捉えられたということです。客観的に見てみると、「なんだ、そういうことなのか」と自分自身を受け入れられることも多いですよ(^^)